2022年のエネルギーセクターは、外部要因が株価を動かす典型例だ。ロシアのウクライナ侵攻(地政学)に始まり、EU禁輸・G7価格上限(制度的制裁)、OPEC+の大幅減産(産油国の政治的決定)、そして40年ぶりの高インフレ(マクロ)が複合的に重なり、S&P500全体が▲18%の中でXLEだけが+75%超という異次元の動きをした。各イベントを3軸(外部・内部・テクニカル)で分解しながら、「なぜエネルギーだけが市場の逆を行ったのか」を読み解いていく。
ロシア、ウクライナへ全面侵攻開始——原油$100超え
2022年2月24日、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した。世界第3位の産油国(日産約1,000万バレル)が戦争当事者となったことで、Brent・WTI原油がいずれも100ドルを突破。エネルギー株への資金流入が一気に加速した。侵攻前の$22〜23台から、3月上旬には$32台まで約+40%近く上昇する場面もあった。外部(地政学)軸が完全に支配した局面で、企業決算や株式のテクニカル節目はほとんど関係しなかった。
出典: U.S. Energy Information Administration (EIA) (2022-02-28) / Federal Reserve Bank of St. Louis (2022-06-01)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
Brent原油が$130超——エネルギー株に地政学プレミアム最大化
3月7〜8日にかけてBrent原油は一時$139台に達し、2008年以来の最高値圏に。米国がロシア産石油の禁輸を検討・発表(3月8日)したことが引き金となった。同月16日にはFOMCが2018年以来初の利上げ(+0.25%)を実施したが、エネルギーセクターはこの利上げの逆風を原油高の恩恵で相殺し、高値圏を維持した。3軸の相殺効果——外部(地政学)がマクロ(利上げ)の逆風を上回る局面だった。
出典: U.S. Energy Information Administration (EIA) (2023-01-09) / World Economic Forum (2022-03-09)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
EU第6次制裁——ロシア産石油の禁輸決定
EUが第6次制裁パッケージを採択し、ロシア産原油の海上輸送禁止を12月5日から実施することを決定した。EUはロシアの石油輸入の約90%を削減する見込みで、供給不安が短期的なニュースから制度的・構造的な変化へと昇格した。西側エネルギー企業にとっては長期的な価格環境の改善を意味し、株式市場はこれをXLEの追い風として評価した。法的拘束力を持つ禁輸は、地政学ショックより持続性が高い。
出典: Center for Strategic and International Studies (CSIS) (2022-06-03) / Council of the European Union (2022-06-03)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 8
リセッション懸念でXLE▲5.2%——原油も急落局面へ
5月のFOMC+0.5%利上げの次に、6月はさらに+0.75%の大幅利上げ観測が台頭。景気後退不安が一気に高まり、「FRBが原油需要を破壊する」との懸念から原油が急落。6月13〜17日の3営業日でXLEは約▲15%の急落となった。ただし、地政学・構造的な供給制約の変化はなく、この急落は後から見ると押し目に過ぎなかった。インフレ受益セクターでも、短期のリスクオフは容赦なく売りに来る。
出典: U.S. Energy Information Administration (EIA) (2023-01-17) / Wikipedia (2022-12-31)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
FOMC+0.75%利上げ連続→XLE▲6.9%——エネルギーも例外なし
FOMCが9月21日に4回連続の+0.75%大幅利上げを実施し、11月にもさらなる利上げを示唆した。全セクターが一斉に売られ、XLEは翌2営業日(9月22〜23日)で▲6.9%と期間最大の急落を記録。ドル高も原油(ドル建て)の重石となった。しかし10月のOPEC+減産決定で急反発したことが示すように、マクロのリスクオフは外部(地政学・OPEC)の供給側のニュースで瞬時に上書きされた。
出典: CNBC (2022-09-22)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
OPEC+が月200万バレルの大幅減産を決定——XLE急反発
OPEC+がウィーンで11月から日量200万バレルの削減を決定(市場予想の2〜5倍規模)。バイデン政権が圧力をかける中でサウジアラビアが主導した大幅減産は、「リセッションで需要が落ちても供給側で吸収する」という強いシグナルとなった。XLEは10月3〜5日で約+10%反発し、その後11月15日の期間最高値($41.79)に向かって上昇を再開。外部要因(OPEC+の政治的意思決定)が短期のテクニカル・センチメントを一瞬で上書きした典型例。
出典: CNBC (2022-10-05) / CNN (2022-10-05)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
G7・EUがロシア産原油に$60価格上限を発動
G7とEUがロシア産海上輸送原油に$60/バレルの価格上限を発動した。ロシアの収入を減らしながら世界市場の供給を維持する仕組みで、西側エネルギー企業が高い実現価格で販売できる環境が引き続き確保された。XLEは11月の高値圏($40前後)を維持し、2022年末に向けて底堅い推移となった。地政学リスクを制度(structural)として固定化することで、エネルギー市場の構造は変わり続けた。
出典: U.S. Department of the Treasury (2022-12-05) / Wikipedia (2022-12-05)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 8