このシナリオは2022年6月〜2023年2月にかけての米国天然ガスファンド(UNG)の乱高下を扱う。読み方のポイントは「外部要因が主役」という点だ。ロシアのNord Stream停止、Freeport LNG爆発事故、記録的暖冬という3つの大きな外部イベントが、数ヶ月間隔で連続してUNGを動かした。各イベントについて「何が起きたか → 需給をどう変えたか → 価格がどの方向に動いたか」を3軸フレームで整理しながら読み進めてほしい。
Freeport LNG爆発事故——米輸出能力の約20%が停止
2022年6月8日、テキサス州クインタナ島のFreeport LNGターミナルで爆発・火災が発生した。同施設は米国第2位のLNG輸出ターミナルで、約2.0 Bcf/日の輸出能力を持つ。事故の翌日(6/9)にHenry Hubスポット価格は-1.27$/MMBtu急落し、その後6/14の「秋以降まで再稼働なし」との発表でUNGは-16.0%と歴史的急落を演じた。輸出されるはずだったガスが国内に滞留し、在庫積み上がり懸念が急速に広がったためだ。
出典: CNBC (2022-06-14) / EIA (2022-07-14)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
Nord Stream 1保守停止前の供給懸念——UNG+12%急騰
2022年7月中旬のNord Stream 1の年次保守(10日間停止予定)を前に、「ロシアが保守後に再開しないのでは」という市場懸念が急速に広まった。欧州のガス需給が再び逼迫するとの見方で米LNG輸出需要増への期待が高まり、7/7にUNGは+12.2%急騰した。欧州の地政学リスクが大西洋を越えてHenry Hubを動かす構図が鮮明になった局面だった。
出典: CNBC (2022-08-22) / CNBC (2022-08-31)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
GazpromがNord Stream 1停止を宣言——UNG高値135.16ドル
ロシアのGazpromが8月22日にNord Stream 1の停止を予告し、8月31日〜9月2日にかけて「無期限停止」を宣言した。欧州のTTFガス価格は340ユーロ/MWhと史上最高値を更新し、米Henry Hubも8月に9.85$/MMBtuと2008年以来最高値に達した。UNGは8/22に高値135.16ドルをつけた。欧州の危機→世界LNG市場逼迫→米LNG輸出需要増という連鎖が最も強く効いた瞬間だった。
出典: ICIS (2022-09-02) / CNN (2022-09-02)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
Nord Stream無期限停止の現実化——UNG-9.5%急落
9月2日のGazpromによる無期限停止宣言が確定した後、市場は欧州の対応力を再評価し始めた。欧州各国は省エネ義務化、LNGターミナルの新設・緊急調達、需要産業の操業短縮を急速に進め、在庫は予想より早く積み上がった。地政学ショックへの政策対応が出てくると、初動の過剰反応が修正に転じるという典型パターンで、9/6にUNG-9.5%の調整が入った。
出典: CNBC (2022-09-06)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
暖冬確認と記録的在庫——欧州ガス貯蔵95%満杯でUNG-10%
11月末時点で欧州のガス貯蔵が95%満杯(12年間の平均89%を大幅上回る記録的水準)と判明し、暖冬予報も重なった。米国内でも暖冬傾向でEIA在庫が予想以上に積み上がり続け、12/5にUNG-10.4%、12/19にも-10.5%と大幅下落が続いた。ロシアのNord Stream停止という地政学ショックが、気象という別の外部要因によって大部分が中和されたことが確認された局面だった。
出典: EIA (2023-05-11) / European Commission (2022-11-01)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
2006年以来最暖の1月——Henry Hubが41%暴落しUNG-9.6%
2023年1月は米国で2006年以来最暖の1月となり、暖房度日数(HDD)が10年平均比16%少ない記録的な暖冬となった。EIAによればHenry Hubスポット価格は1月に前月比41%下落した。UNGは1/3から1/10にかけて約-18%急落し、期間中最大の暴落フェーズに突入した。Freeport LNGの再稼働遅延(2023年2月まで延期)も在庫積み上がりを加速させ、在庫過剰×暖冬という二重の下落要因が同時に作用した。
出典: EIA (2023-03-01) / EIA (2023-08-03)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
Freeport LNG段階的再稼働——在庫過剰でUNGはさらに-8.8%
2023年2月初旬にFreeport LNGが段階的な再稼働を開始した。本来であれば輸出回復で価格を押し上げる要因のはずだが、暖冬による在庫過剰(5年平均を183 Bcf上回る2,266 Bcf)が優勢であり、2/1にUNG-8.8%とむしろ下落が続いた。再稼働後もUNGは最安値(2/21に28.84ドル)へ向かい、開始比-70%の暴落を完成させた。複数の外部要因が同時に作用するとき、どれが優勢かを判断することが最も難しいことを示す局面だった。
出典: Natural Gas Intelligence (2023-02-03) / Environ Energy (2023-03-15)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 8