このシナリオは、2023年4〜10月にかけて米国の長期国債ETF(TLT)が約-20%下落した局面を学ぶ教材だ。単純な利上げ局面(2022年)とは異なり、政策金利が据え置かれていながら「財政悪化・国債増発・FOMCタカ派ドット・Fitch格下げ・CPI上振れ」という外部要因が重なり合い、長期金利が5%(16年ぶり高水準)まで自律上昇した。
期間高値95.38——利下げ期待でスタート
2023年3月のSVB破綻を受け、市場はFRBの早期利下げ転換を期待してTLTを買い上げ、4月6日に期間高値95.38を記録した。この時点でインフレは前年比4.9%と依然高く、期待の先取りが過剰だった可能性があった。外部軸(マクロ)の読み違いがその後の急落の遠因となった。
出典: CNBC (2023-05-03) / Federal Reserve (2023-05-03)
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5月FOMC——利上げ停止示唆もhigher for longerが始まる
5月3日のFOMC(FFレート5.00〜5.25%へ最終利上げ)は声明から「追加引き締めが適切」という文言を削除し、利上げ停止を示唆した。しかし翌5月1日(前日比)にTLTは**-2.88%**と急落した。Powellは「インフレを2%に戻すには長期間の制約的政策が必要」と繰り返し、利下げが近いという期待を否定した。「pause ≠ pivot(転換)」という市場の再認識がTLT下落の始まりだった。
出典: CNBC (2023-05-03) / Federal Reserve (2023-05-03)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
Fitch、米国の信用格付けをAAAからAA+に格下げ
格付け会社Fitchが8月1日に米国の長期信用格付けをAAAからAA+へ引き下げた。「過去20年のガバナンス悪化、反復する債務上限問題、財政赤字の拡大」が理由だった。これにより財政リスクプレミアム(ターム・プレミアムの財政要因)が上昇し始めた。この時期、財務省のQRA増発発表と同時に来たことで、財政面の下押し圧力が本格化した。
出典: CNN Business (2023-08-01) / NBC News (2023-08-01)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 8
財務省クォータリー・リファンディング——長期国債の大規模増発を正式発表
財務省は8月2日のQRAで、10年国債+30億ドル/月・30年国債+20億ドル/月の増発を正式発表した。FY2023の実質財政赤字は約2兆ドルに膨らんでいた。FRBがQTで買い手を降りている中、民間が長期国債を消化するために高い利回りを要求する需給構造が確立された。これが「財政が主役」の局面の開幕を告げた。
出典: U.S. Department of the Treasury (2023-08-02) / Wolf Street (2023-08-02)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
9月FOMCドットプロット——2024年利下げ見通しを4回→2回に削減
9月20〜21日のFOMCは政策金利を据え置いたが、SEP(ドットプロット)で2024年末の予想政策金利を5.1%(2回の利下げのみ示唆)と示した。6月時点の4回の利下げ見通しから大幅に削減された。TLTは翌日**-2.57%**(80.81)下落。Powellの「higher for longer」メッセージが数値で裏付けられた形となり、10年金利の4.5%→5%への加速が始まった。
出典: CNBC (2023-09-20) / Federal Reserve (2023-09-20)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
9月CPI 3.7%——予想超過でインフレ鈍化ペース停滞
9月CPI(前年比3.7%、予想3.6%超過)が10月12日に発表され、TLTは**-2.71%**(76.92)と急落した。住居費とガソリンが主なドライバーで、インフレ収束の見通しが遠のいた。これは「9月FOMCタカ派ドット→CPI上振れ」という2段階の悪材料が重なった形で、10年金利の5%到達を加速させた。
出典: CNBC (2023-10-12) / J.P. Morgan (2023-10-12)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
10年金利5.02%(16年ぶり高水準)——TLTが期間安値73.97を記録
10月19日、米10年国債利回りが5.02%に達し、2007年以来16年ぶりの高水準を記録した。TLTは期間安値73.97(4月高値から-22.4%)を付けた。FRB自身が後にこの局面を「The Treasury Tantrum of 2023」と呼んだ。Fitch格下げ・QRA増発・FOMCタカ派・CPI上振れという外部要因が6ヶ月かけて蓄積した結果が5%という数字だった。この日が底打ちのターニングポイントとなった。
出典: Federal Reserve (2024-09-03) / ETF.com (2023-10-19)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
財務省QRAが市場予想比で増発抑制——長期金利上昇の一服
10月31日に発表された財務省QRAは、長期国債の増発規模が市場予想を下回り、T-Billへの依存を高める方針が示された。これにより需給悪化の最大の懸念が一服し、TLTは底から持ち直した。11月14日の10月CPI(3.2%、予想を大きく下回る)との相乗効果で長期金利は100bp超急低下し、TLTは11月だけで約+8%の急反発を演じた。
出典: CNBC (2023-10-31) / U.S. Department of the Treasury (2023-10-31)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3