なぜ株価は動いたか
ETF中級SPYSPDR S&P 500 ETF Trust2025-02-032025-07-14

S&P500 2025 — 関税ショック『Liberation Day』史上最大級の急落とV字回復

2025年4月2日、トランプ政権が全貿易相手国への相互関税『Liberation Day』を発表。S&P500は4月3-4日に史上最大級の2日間下落で弱気相場の縁まで売られたが、4月9日の『90日関税停止』発表で2008年以来最大の1日上昇(+9.5%)とV字反発し、6月27日には最高値を更新した。主役は外部マクロ・地政学(政策ショック)で、ニュース1本で需給と心理が一変した。

STEP 1 ・ 前提知識

まず押さえる前提知識

予測の前に、この銘柄と『値動きの見方』の土台をつかみましょう。

この商品について

SPY(SPDR S&P 500 ETF)は米国を代表する大型株500社で構成するS&P500指数に連動するETF。米国株式市場全体の体温計として使われ、出来高・流動性が世界最大級です。個別企業ではなく『米国経済そのもの』に近い値動きをします。

2025年初の状況(出発点)

S&P500は2024年の上昇を引き継ぎ、2025年2月19日に当時の最高値を付けたばかり。一方で2024年の大統領選で勝利したトランプ政権が『関税』を看板政策に掲げており、市場は『どこまで本気か』を測りかねていました。2〜3月にかけて関税を巡る発言で既にじりじり調整が進んでいた、という助走があります。

予測の前に押さえる仕組み(関税と株価)

・関税は輸入コストを押し上げ、企業の利益率を圧迫し、物価(インフレ)を押し上げる方向に働きます。さらに相手国の報復で輸出が減れば景気そのものが冷えます。 ・だから『広く・高い関税』は株式にとってはっきりした逆風で、しかも金額や対象が政権の判断ひとつで急変するため、不確実性そのものが売られます。 ・中銀(Fed)は関税でインフレが上がると利下げしにくく、株価の下支え(金融緩和)が期待しづらくなります。

ヘッドライン・リスクという考え方

この相場の核心は『材料が決算でも金利でもなく、政権のひと言で決まる』こと。発表のタイミングも内容も予測困難で、同じ日に強気と弱気が交錯します(4/7はフェイクの停止報道で日中に乱高下しました)。方向を当てにいくより、不確実性が高いときにどうポジションを取るか——確率と建玉サイズの問題として捉えるのが、この教材の狙いです。

キーワード

相互関税(Reciprocal Tariffs)
相手国が米国製品にかける関税や貿易障壁に『見合う』水準を米国側も課す、というトランプ政権の関税方針。2025/4/2に全貿易相手国へ最低10%、一部の国にはより高い率が発表された。
Liberation Day(解放の日)
トランプ大統領が相互関税の発表日(2025/4/2)をこう呼んだ通称。米国を不公正な貿易から『解放する』という政権側の表現。
弱気相場(ベアマーケット)
直近高値から概ね-20%以上下落した状態。S&P500は4月の急落で一時この水準に接近し、ナスダックは先行して弱気相場入りした。
VIX(恐怖指数)
S&P500オプションから算出される予想変動率。通常15前後だが、パニック時に急騰する。4/7は一時60超、4/8終値52.33と2020年以来の高水準。
ショートカバー(買い戻し)
空売りしていた投資家が損失回避や利益確定で買い戻すこと。下落局面で売りが積み上がった後、好材料が出ると一斉の買い戻しが急反発を増幅する。
V字回復
急落と急反発がアルファベットのVの字を描く値動き。底で売り切った後に材料が反転すると起きやすいが、後から見て初めて『V字だった』と分かる。
リスクオフ/リスクオン
投資家がリスク資産(株)を避けて安全資産(国債・現金)へ逃げる動きがリスクオフ、その逆がリスクオン。

当時の市場環境(マクロ)

個別の決算(内部要因)だけでなく、金利・インフレ・FRBの姿勢といった「外部要因」の土台を押さえると、値動きの背景がイメージしやすくなります。

政策金利(FFレート)
4.25–4.50%(据え置き)
2024年に利下げした後、2025年前半は据え置きが続いた。関税ショックでも緊急利下げは行われず、金融政策は株価を救済しなかった。
FRBの姿勢
様子見(関税のインフレ影響を警戒)
Powell議長は4/4に『関税は想定より大きく、インフレを押し上げる。我々は明確になるまで待つ』と発言。緩和期待を打ち消した。
VIX(恐怖指数)
通常15前後 → 4/7に一時60超、4/8終値52.33
2008年・2020年を除けば歴史的な高水準。恐怖の極大はしばしば底の近くで起きる(ただし事前には分からない)。
関税の中身
全相手国に最低10%+一部高率、中国は段階的に125%へ
4/4に中国が34%の報復関税を発表し全面化を懸念。4/9の90日停止は中国を除外(むしろ対中は引き上げ)。
株式市場の地合い
2/19最高値 → 4月に弱気相場の縁 → 6/27最高値更新
約2か月で-20%近い急落と完全回復。年初来では一時2桁マイナスから、夏には最高値圏へ振れた。
このあとの「予測」では、ある時点までのチャートと状況だけを見て、その後の値動きを当てます。 「いまどんな材料が出たか → 株価はどう反応しそうか」を考えてみましょう。

STEP 2 ・ 予測

予測してみる

その時点までのチャートと状況から、イベント後に株価がどう動いたかを当てましょう。

ローソク足+出来高+移動平均(50/200)2025-04-02 まで表示中

現在の状況
S&P500は2/19に最高値を付けた後、関税を巡る発言でじりじり調整。市場は関税が『どこまで本気か』を測りかねています。

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4月2日、立会後にトランプ政権が全貿易相手国への相互関税『Liberation Day』を発表した。翌4/3以降のS&P500(SPY)は?

💡 経験則(基準率)
経験則: 想定を超える広範な関税・貿易戦争は短期に株式を強く押し下げやすい。ただし下落の深さと期間は政権の出方次第で、事前には読みづらい。
※ 確率の話であって保証ではありません。「方向」より「起きやすさ」で考えましょう。

STEP 3 ・ 解説

何が起きたか — 要因の分解

チャートのマーカーをタップすると、その出来事の解説に移動します。

3軸分解(このシナリオの寄与)

外部 (マクロ・環境)

値動きの主役。4/2の相互関税発表(政策ショック)→中国の報復→世界的なリスクオフという外部要因が支配した。Fedは4.25–4.50%で据え置きのまま、Powellは『関税はインフレを押し上げる、我々は待つ』と述べ、金融政策は救済に動かなかった。下落も反発も、引き金は企業業績ではなく政権の関税方針というワシントン発のヘッドラインだった。

内部 (企業・業界ファンダ)

脇役。この期間の値動きを企業・業界のファンダで説明するのは難しい。決算シーズンは進行していたが、市場が見ていたのは個社の数字ではなく『関税がサプライチェーンと利益率にどう効くか』というマクロの一次微分。内部要因が前面に出るのは、政策不透明感が和らいだ後半(5月以降)になってからだった。

テクニカル・需給・心理

増幅役。VIXは4/7に一時60超、4/8の終値52.33と2020年以来の水準へ急騰し、恐怖が売りを呼んだ。4/7にはフェイクの『90日停止』ヘッドラインで日中に乱高下、4/9は出来高を伴うショートカバーと押し目買いでギャップアップ。節目(弱気相場の-20%ライン、最高値更新)への反応は、需給・心理の典型例として読める。

⚖️ 当時の弱気の主張

当時の弱気には十分な説得力があった——相互関税は選挙公約どおりの『本物』で、中国の報復で全面的な貿易戦争に発展しつつあり、関税はインフレを押し上げてFedの利下げを縛る(=Fed putは効かない)。サプライチェーンと企業利益率への打撃は数四半期続き、スタグフレーション(停滞+物価高)に陥るという見立てだ。実際4/2〜4/8まではこの読みが正しく、相場は弱気相場の縁まで売られた。4/9の反転に賭けるのは『政権が政治的に折れる』という予測困難な賭けで、結果は最初から自明ではなかった。

🚫 無効化条件(何が起きたら逆か)

次のいずれかが起きていれば反発(V字)の読みは崩れていた: ①トランプ政権が相互関税を停止せず満額発動を続ける、②中国に続き他の主要国も報復関税を連鎖させ全面的な貿易戦争に発展、③関税起因のインフレ再加速でFedが利下げ余地を失い金融引き締め継続を示唆、④4/9停止が一時的なブラフで90日後に再発動が確定。これらが『無効化条件』で、関税を巡る発表のたびにここが崩れていないかを確認するのが筋。

マーカー色 =外部内部テクニカル・需給・心理

このシナリオでは、わずか約2か月で弱気相場の縁まで急落し、その後完全回復したS&P500(SPY)の値動きを、6つの出来事に分解します。チャート上のマーカーは色が所属する軸(外部=アンバー / 内部=エメラルド / テクニカル・需給・心理=バイオレット)、ラベルが出来事の内容(関税発表・90日停止・最高値など)を表します。各マーカーは、下の同じ日付の解説と対応しています。主役は一貫して**外部要因(政権の関税方針)**で、ニュース1本で需給と心理が一変する『政策相場』の典型例です。

地政学・外部イベント貿易摩擦・関税

『Liberation Day』相互関税の発表 — 翌日から史上最大級の急落

4月2日の立会終了後、トランプ政権が大統領令14257で全貿易相手国へ最低10%、一部の国にはより高い相互関税を課す『Liberation Day』を発表しました。広く高い関税は企業の利益率・景気・インフレに直接効く逆風で、翌4月3日のSPYは**-4.9%。引き金は決算でも金利でもなく、政権の関税方針という外部(地政学・政策)要因**でした。NVDAが決算(内部要因)主導だったのと好対照で、「何が株価を動かしているか」の主役は局面ごとに変わることを示す起点です。

💡 学び値動きの引き金は決算でも金利でもなく、政権の関税方針という外部(地政学・政策)要因。広く高い関税は企業利益率・景気・インフレに直接効く逆風で、株式は素直に売られた。主役の軸が局面で変わることを示す起点。

出典: Wikipedia / NPR (2025-04-03)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7

地政学・外部イベント貿易摩擦・報復関税

中国の報復関税で全面戦争懸念 — 2日間で約-10%、6.6兆ドル消失

4月4日、中国が米国製品に34%の報復関税を発表。これにより「一国の関税」が「貿易戦争」へと格上げされ、不確実性が一段跳ね上がりました。SPYはこの日**-5.9%で、4/3とあわせ2日間で約-10%——時価総額にして6.6兆ドル超が消えた史上最大級の2日間下落**です。VIXは45超へ急騰し、恐怖そのものが追加の売りを呼ぶ(外部要因がテクニカル・心理軸を通じて増幅される)展開でした。

💡 学び相手国の報復は『一国の関税』を『貿易戦争』に格上げし、不確実性を一段引き上げる。VIXは45超へ急騰し、恐怖そのものが追加の売りを呼んだ(外部要因がテクニカル・心理軸を通じて増幅)。

出典: Wikipedia / Bloomberg (2025-04-07)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7

投資家心理・センチメント群集心理・ヘッドラインリスク

フェイク『90日停止』報道で日中乱高下 — ヘッドライン・リスク

4月7日、「TRUMPが中国を除く全相手国への90日関税停止を検討」という未確認ヘッドラインが報じられ、株価は日中に4%安から一時プラス圏へ急騰しました。しかしホワイトハウスがこれを「fake news」と否定すると値は元に戻り、終値はほぼ横ばい(3日続落)。政策相場ではヘッドライン1本で日中に大きく上下し、誤報と分かると巻き戻る——ニュースのスピードに判断が追いつかず、当てにいくほど振り回される局面の典型です。この日VIXは一時60を超えました。

💡 学び政策相場ではヘッドライン1本で日中に大きく上下し、誤報と分かると巻き戻る。ニュースのスピードに判断が追いつかず、当てにいくほど振り回される——不確実性が極大の局面の典型。VIXは一時60超。

出典: Investing.com (2025-04-07) / Macroption

所属軸: テクニカル・需給・心理 ・ カテゴリ 6

マクロ経済財政・通商政策の転換

90日関税停止を発表 — +9.5%、2008年以来最大の1日上昇でV字反発

4月9日、トランプ大統領が中国を除く相手国への相互関税を90日間停止すると発表(中国に対してはむしろ125%へ引き上げ)。S&P500は**+9.5%(SPYは調整後ベースで+10.5%)と、2008年以来最大の1日上昇でV字反発しました。下落と同じく反発の引き金も外部材料(政策転換)ですが、これを増幅したのは悲観の極からのショートカバー(買い戻し)**と押し目買いという需給・心理です。底も天井も後からしか分からず、当時は「政権が折れる」という予測困難な政治判断に賭ける形でした。

💡 学び下落と同じく反発の引き金も外部材料(政策転換)。悲観の極からショートカバーと押し目買いが一斉に入り、需給・心理が反発を増幅した。底も天井も後からしか分からず、当時は政権が折れる確率への賭けだった。

出典: CBS News (2025-04-09) / CNN Business (2025-04-09)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

地政学・外部イベント貿易交渉・緊張緩和

米中ジュネーブ協議でデエスカレーション — +3.3%、戻り+20%超に

週末にスイス・ジュネーブで行われた米中協議で、両国が相互関税を90日間大幅に引き下げる(米→中30%、中→米10%)と発表。週明け5月12日のSPYは**+3.3%上昇し、4月の安値からの戻りが+20%超**に達しました。反発を確かにしたのもまた外部要因(貿易の緊張緩和)で、政策相場では「合意」そのものが主役。企業業績はこの局面でも脇役にとどまりました。

💡 学び反発を確かにしたのも外部要因(貿易の緊張緩和)。4月安値からの戻りが+20%超に達し、関税ショックの巻き戻しが本格化。政策相場では『合意』も主役で、企業業績はこの局面でも脇役だった。

出典: The Washington Post (2025-05-12) / CNBC (2025-05-12)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7

投資家心理・センチメント節目・最高値更新

S&P500・ナスダックが最高値更新 — 関税ショックから完全回復

6月27日、S&P500とナスダック総合が終値で史上最高値を更新。2月19日以来の高値で、4月の関税ショックからの完全回復を確認しました。約2か月で-20%近い急落と完全回復という極端な往復で、最高値更新という節目は心理の転換を象徴します。ただしこれは結果論——当時の弱気の主張(関税は長期化し、スタグフレーションに陥る)にも根拠はあり、回復は最初から自明だったわけではなく、確率的にしか語れませんでした。

💡 学び約2か月で-20%近い急落と完全回復。最高値更新という節目は心理の転換を象徴するが、これは結果論。当時の弱気(関税は長期化・スタグフレーション)にも根拠はあり、回復は確率的にしか語れなかった。

出典: NPR (2025-06-27) / CNN Business (2025-06-27)

所属軸: テクニカル・需給・心理 ・ カテゴリ 6

各出来事の出典は、上の解説それぞれの末尾に記載しています。

お疲れさまでした 🎉

別のシナリオでも「なぜ動いたか」を分解してみましょう。