このシナリオでは、約1年半で株価が約10倍になったMicron(MU)の値動きを、チャート上の8つの出来事に分解します。主役は需給(メモリ価格)——AIデータセンターがHBM・高性能DRAMを奪い合い、価格が四半期ごとに二桁%上昇する『メモリ・スーパーサイクル』です。ただし好決算でも出尽くしで下げる場面、関税ショックで半値近くまで叩かれる場面もあり、上昇は一直線ではありませんでした。チャート上のマーカーは色が所属する軸(外部=アンバー / 内部=エメラルド / テクニカル・需給・心理=バイオレット)、ラベルが出来事の内容を表します。
FQ1'25決算 — 記録的売上でも翌日-16%(コンシューマ弱含み)
2024年12月18日引け後の第1四半期(FY2025)決算は、売上87.1億ドル(前年比+84%)と記録的で、データセンター売上は前年比+400%超。AI向けは絶好調でした。ところが翌四半期のガイダンスを79億ドルと市場予想を下回って提示——PC・スマホ等コンシューマ向けの在庫調整が重しになり、翌19日は**-16.2%**急落しました。メモリ需要の二面性(AI強・コンシューマ弱)を象徴し、決算は実数より「見通しと市場予想のギャップ」で評価されることを示します。
出典: SEC EDGAR (2024-12-18)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1
FQ2'25決算 — HBM初の10億ドル超・2025暦年完売、なのに翌日-8%
2025年3月20日引け後の第2四半期(FY2025)決算で、HBM売上が初めて四半期10億ドルを突破(前期比+50%超)、HBM3Eは2025暦年が完売(sold out)と表明しました。AIメモリ需要の本物さを示す強気の内容です。にもかかわらず翌21日は-8.0%下落。完売という強いヘッドラインでも、期待が事前に織り込まれていれば「予想超の上振れ」がないと売られます(sell the news)。完売は数四半期先の収益の裏付けで、効くのは時間差——ニュースの強さと当日の株価反応は別物だという最重要の学びです。
出典: SEC EDGAR (2025-03-20) / GlobeNewswire / Micron IR (2025-03-20)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1
相互関税『Liberation Day』ショック — 数日で半値近くへ
2025年4月2日、トランプ政権が広範な相互関税(Liberation Day)を発表。半導体自体は適用除外でしたが、世界的な景気後退懸念が株式市場を直撃し、シクリカル株のMUは4月3日に-16%、4日も**-13%と続落、安値は$64台**(期間中の底)まで叩き売られました。メモリ需給は何も変わっていないのに、です。需給が強くても外部マクロ・地政学ショックには逆らえないこと、3軸は重ね合わせで効き、外部が支配する局面では需給ストーリーが一時的に無力化することを示します。
出典: The American Presidency Project (2025-04-02) / The Motley Fool (2025-04-10)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
関税90日停止で急反発 — 翌日+18.8%
4月9日、相互関税の90日間停止が伝わると、リスクオンが急回復。MUは1日で**+18.8%**と急反発しました。外部ショックで売られた株は、ショックの解除で同じくらい激しく戻すことがあります。本来のファンダ(メモリ需給)は数日前から何も変わっていないのに、株価は外部要因だけで半値→急反発と大きく上下しました。マクロ次第の局面ではボラティリティが極端に高まる——方向観が正しくても、この振れ幅に耐えるサイズ管理が不可欠です。
出典: Wikipedia / Seeking Alpha (2025-04-03)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
FQ4'25決算 — 売上113億ドル・DC倍増の記録更新でも翌日-2.8%
2025年9月23日引け後の第4四半期(FY2025)決算は、売上113.2億ドル(前年同期77.5億ドル)、データセンター売上が前年比倍増して過去最高、翌四半期も粗利50%超のガイダンスと記録づくめでした。それでも翌24日は**-2.8%**。事前に株価が大きく上がっていれば、good newsでも反応は鈍ります(再びの出尽くし)。良い決算が出るほど「次もこれを超えられるか」のバーが上がる——e2と同じ構図で、決算は絶対水準でなく期待との差で評価されることを繰り返し示します。
出典: SEC EDGAR (2025-09-23) / Micron IR (2025-09-23)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1
FQ1'26決算 — DRAM価格+20%・粗利56.8%で翌日+10%(素直に上昇)
2025年12月17日引け後の第1四半期(FY2026)決算は、売上136.4億ドル(前年比+57%)、DRAM価格が前期比+20%、粗利率**56.8%(前期比+11pt)と記録更新。2026年のHBM価格・数量も確定したと示しました。翌18日は+10.2%**と素直に上昇。e2(完売でも-8%)との対比が肝です——今回は「メモリ価格上昇が利益に直結し始めた」という想定超のサプライズが伴ったため、同じ好決算でも反応は正反対になりました。
出典: SEC EDGAR (2025-12-17) / The Motley Fool (2025-12-17)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1
メモリ・スーパーサイクル本格化 — DRAM/HBM供給逼迫で年初から急騰
2026年に入ると、AIデータセンターがHBM・高性能DRAMを奪い合い、メモリの供給不足率が2011年以来の水準に。契約価格が二桁%/四半期で上昇する『メモリ・スーパーサイクル』が市場の共通認識となり、年初からMUは急騰(1/2に**+10.5%)しました。このシナリオの主役=需給です。メモリ株の収益は「出荷量×単価」で、価格上昇局面では利益が売上以上に跳ねます(オペレーティングレバレッジ)。AIがメモリ供給を吸い上げる構造逼迫が、長く低PERで放置されたシクリカル株MUを構造需要で再評価**させました。
出典: CNBC (2026-01-10) / IEEE Spectrum
所属軸: テクニカル・需給・心理 ・ カテゴリ 4
時価総額1兆ドル到達 — UBS目標$1,625で+19.3%(過熱の極み)
2026年5月、メモリ不足が一段と深刻化(Micronは顧客需要の約6割しか供給できないと言及)する中、UBSが目標株価を**$535→$1,625**(ウォール街最高値)へ引き上げ。MUは1日で**+19.3%(2011年以来最大の上げ幅)急騰し、時価総額が初めて1兆ドルに到達しました。需給は本物でも、1兆ドルの大台や突出した目標株価は強気の極み(センチメント)**です。皮肉なことに、シクリカル株はピーク近辺ほどアナリストが強気化しがち——増産による供給回復という無効化条件を忘れてはいけない、過熱を測るセンチメント軸の典型パターンです。
出典: CNBC (2026-05-26) / The Motley Fool (2026-05-26)
所属軸: テクニカル・需給・心理 ・ カテゴリ 6