なぜ株価は動いたか
個別株中級LULUlululemon athletica inc.2025-01-022026-05-29

Lululemon 2025:関税と米国需要の失速で年初来60%下落(敗者ケース)

高級アスレジャーの成長株LULUは、米国(北米)既存店売上のマイナス転落という『内部の需要鈍化』に、トランプ関税による粗利圧迫という『外部マクロ』が重なり、2025年に3度の決算ガイダンス下方修正で年初来約60%下落した。S&P500が同期間に+30%超だったなか、内部ファンダ主導で1社だけ崩れた敗者ケース。

STEP 1 ・ 前提知識

まず押さえる前提知識

予測の前に、この銘柄と『値動きの見方』の土台をつかみましょう。

この銘柄について

lululemon(LULU)はヨガ発祥の高級アスレジャー(運動着×日常着)ブランド。レギンス等の機能性ウェアを定価販売(値引きを抑える)するビジネスで、高い粗利率と二桁成長で『プレミアム成長株』として高いバリュエーションを得てきました。売上は北米(米州)が中心で、近年は中国を含む国際が成長ドライバーです。

2025年初の状況(出発点)

株価は年初に約370〜420ドル。ただし米国の消費は『K字』的に二極化し、インフレ疲れで中間層の財布が締まりつつありました。アパレル各社は米国トラフィック(来店客数)の鈍化を警戒。一方で会社・市場は引き続き二桁成長を前提にした見通しを置いていました。

予測の前に押さえておく仕組み

・小売の健康度は『同店(既存店)売上=コンプ』で測ります。新規出店を除いた既存店ベースで、プラスなら健全、マイナスは需要鈍化のサイン。 ・決算は引け後に発表され、株価は翌営業日に反応します。EPS(実績)が予想を上回っても、『ガイダンス(次期/通期見通し)』が悪ければ売られます。 ・アパレルは生産の多くを海外(ベトナム・カンボジア等)に委託するため、輸入関税は粗利を直接圧迫する外部コストです。

期待値(バリュエーション)の高さ

成長株は『高い成長が続く』前提で高PERが正当化されます。逆に成長が鈍る兆し(コンプのマイナス転落・ガイダンス引き下げ)が出ると、業績の小さな悪化でもPER(評価倍率)の収縮を伴い株価が大きく下がります。これがLULUで起きた『ダブルパンチ(業績↓×倍率↓)』です。

キーワード

アスレジャー
アスレチック(運動)+レジャーの造語。運動着を日常着として着るカテゴリ。LULUはその高級帯の代表ブランド。
同店(既存店)売上 / コンプ
新規出店を除いた既存店ベースの売上増減率。小売の地力を測る最重要指標。マイナスは需要鈍化のサイン。
ガイダンス
企業が示す次期・通期の業績見通し。実績(EPS)以上に株価を動かすことがある。
関税(タリフ)
輸入品に課される税。海外生産が多いアパレルでは粗利を直接圧迫する外部コストになる。
相互関税(Reciprocal Tariffs)
2025年4月にトランプ政権が発表した、相手国別の高関税。ベトナムは当初46%が提示された(後に交渉で引き下げ)。
de minimis(少額免税)
一定額以下の小口輸入を関税免除する制度。撤廃によりカナダ拠点からの米EC出荷コストが上昇した。
粗利率(グロスマージン)
売上から原価を引いた粗利の割合。関税・値引き(マークダウン)の増加で低下する。
バリュエーション(PER)
株価を1株利益で割った評価倍率。成長期待が高いほど大きく、成長鈍化で収縮(マルチプル・コントラクション)する。
マークダウン(値引き)
売れ残り在庫をさばくための値下げ。定価販売モデルのLULUにとって粗利と『プレミアム感』を損なう警戒材料。

当時の市場環境(マクロ)

個別の決算(内部要因)だけでなく、金利・インフレ・FRBの姿勢といった「外部要因」の土台を押さえると、値動きの背景がイメージしやすくなります。

政策金利(FFレート)
4.25–4.50%(2025年初)→ 緩やかに低下
前年9月から利下げ局面に入っていたが、高水準の金利と物価高で実質的な消費購買力は圧迫されていた。
米国の消費
二極化(K字)・中間層の節約志向
インフレ疲れで裁量的支出を抑制。LULUのような高単価の任意消費財は逆風を受けやすい。
通商政策(関税)
2025/4 相互関税。ベトナム当初46%→交渉で20%(7月)
アパレルの主要生産国に高関税。de minimis撤廃も重なり、輸入コストが構造的に上昇した。
株式市場の地合い
S&P500は2025年通年で堅調(期間中+30%超)
市場全体は最高値圏。LULUの急落は『地合い』ではなく企業固有(内部)要因が主因だったことを示す。
セクター
アパレル/任意消費財は総じて軟調
Nike等も関税・需要で逆風。ただしLULUの下落幅は突出し、ブランド固有の成長鈍化が上乗せされた。
このあとの「予測」では、ある時点までのチャートと状況だけを見て、その後の値動きを当てます。 「いまどんな材料が出たか → 株価はどう反応しそうか」を考えてみましょう。

STEP 2 ・ 予測

予測してみる

その時点までのチャートと状況から、イベント後に株価がどう動いたかを当てましょう。

ローソク足+出来高+移動平均(50/200)2025-03-27 まで表示中

現在の状況
株価は年初来で軟調。米国の消費はインフレ疲れで二極化し、アパレル各社が来店客数の鈍化を警戒する局面。引け後にQ4決算を控えています。

ステップ 1 / 2
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引け後のQ4決算でEPS・売上は予想を上回ったが、CEOが『米国の客足が鈍っている』と述べ通期ガイダンスを慎重に置いた。翌営業日(3/28)の株価は?

💡 経験則(基準率)
経験則: 高PER成長株は、実績が良くてもガイダンスが慎重だと『材料出尽くし+成長懸念』で売られやすい。
※ 確率の話であって保証ではありません。「方向」より「起きやすさ」で考えましょう。

STEP 3 ・ 解説

何が起きたか — 要因の分解

チャートのマーカーをタップすると、その出来事の解説に移動します。

3軸分解(このシナリオの寄与)

外部 (マクロ・環境)

値動きを増幅した外部要因。2025年4月の『相互関税』でベトナム等の主要生産国に高関税が課され、さらにde minimis(少額免税)撤廃でカナダ拠点からの米EC出荷コストも上昇。会社は通期で粗利約2.4億ドル減を織り込んだ。マクロの逆風だが、これは『需要鈍化』という内部問題の上に重なって効いた。

内部 (企業・業界ファンダ)

下落の主因。米国(北米)の客足と既存店売上が鈍化し、Q1で米州コンプ-1〜2%、Q2で米州(Americas)同店-4%へ悪化。製品のニュース性不足・在庫/値引き増という製品サイクルの問題も重なり、四半期ごとにガイダンスを下方修正。成長株の『成長前提』が崩れた。

テクニカル・需給・心理

高い予想成長を織り込んだ高PER成長株が、決算のたびにガイダンス未達で窓を開けて急落(3/28 -14%、6/6 -20%、9/5 -19%)。好決算(EPSは予想超過の四半期も)でも『ガイダンス』が悪ければ売られる典型。下落トレンドでの戻りは戻り売りに押され、安値を更新し続けた。

⚖️ 当時の弱気の主張

弱気の見立てには説得力があった——米国のアスレジャー市場は競合(Alo、Vuori等)の台頭で過密化し、LULUの製品ニュース性は鈍化。高単価ゆえインフレ疲れの中間層に弱い。加えて生産はベトナム等の高関税国に集中し、定価販売モデルでも関税を価格転嫁すれば需要を、転嫁しなければ粗利を失う『板挟み』。高PERは『二桁成長の継続』を前提にしており、コンプがマイナスに転じればマルチプル収縮で大きく下がる、という読みは実際に当たった。

🚫 無効化条件(何が起きたら逆か)

次のいずれかなら下落の読みは弱まった/逆だった: ①北米コンプがプラスを維持し米国需要鈍化が一時的だと確認される、②関税が早期かつ大幅に緩和され粗利圧迫が剥落、③新製品サイクル(Align後継・新カテゴリ)が当たり客足が回復。決算のたびに『北米コンプ』と『通期ガイダンスの方向』が崩れていないかを確認するのが筋。実際はQ4→Q1→Q2と連続で悪化し、無効化条件は満たされなかった。

マーカー色 =外部内部テクニカル・需給・心理

このシナリオでは、約1年半で株価が約6割下落したLULUの「敗者ケース」を、チャート上の4つの出来事に分解します。NVDAが『予想を上回り続けて8倍』になった一方、LULUは『予想を下回り続けて6割減』になりました。同じ決算ドリブンでも、方向が決まると一方向に振れます。マーカーは色が軸(外部=アンバー / 内部=エメラルド / テクニカル・需給・心理=バイオレット)、ラベルが出来事を表し、下の同じ日付の解説に対応します。

企業固有 (ミクロ)業績見通しの下方 / 米国需要鈍化

Q4 FY24決算 — 実績は予想超過も慎重ガイダンスで翌日-14%

2025年3月27日引け後、第4四半期(FY2024)決算を発表。売上は前年比+13%の36億ドル、通年も+10%の106億ドルとEPS・売上ともに予想を上回りました。しかし株価を動かしたのは見通しでした。CEOは「自社調査で消費者がインフレと景気懸念から支出を絞り、米国の来店客数(トラフィック)が業界横断で鈍っている」と述べ、FY25通期を慎重ガイダンス(売上$11.15-11.30B、EPS$14.95-15.15)に置きました。翌28日、株価は約-14%。成長株が「実績」より「見通しと期待の差」で動くこと、そしてこれがその後の連続下方修正の起点となったことを示します。

💡 学びEPS・売上が予想を上回っても、米国需要の鈍化を映した『慎重な見通し』だけで成長株は急落する。株価は実績ではなく『見通しと期待の差』で動く。これがその後の連続下方修正の起点となった。

出典: CNBC (2025-03-27) / SEC EDGAR (2025-03-27)

所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1

マクロ経済通商政策 / 関税

トランプ『相互関税』ショック(4/2発表)

4月2日、トランプ政権が国別の相互関税を発表。LULUの生産依存度が高いベトナムに当初46%という高率が提示され、アパレル・小売株が連鎖的に急落しました。LULUも4月3〜4日にかけて大きく下落。関税は企業がコントロールできない外部(マクロ/通商政策)要因で、生産が高関税国に集中するLULUの粗利を直撃する構造的コストです。すでに進行していた需要鈍化(内部)の上に外部マクロが重なった——3軸は「どれか1つ」ではなく重ね合わせで効くことを示すイベントです(ベトナム関税は後の交渉で7月に20%へ引き下げられました)。

💡 学び関税は企業がコントロールできない外部(マクロ/通商政策)要因。生産が高関税国に集中するLULUの粗利を直撃する構造的コストで、すでに進行していた需要鈍化(内部)の上に重なって効いた。3軸は重ね合わせで効く。

出典: Axios (2025-07-02) / CNBC (2025-07-03)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

企業固有 (ミクロ)ガイダンス下方 / 関税のマージン圧迫

Q1 FY25決算 — 関税で営業マージン見通し引き下げ、翌日-20%

6月5日引け後、第1四半期(FY2025)決算は売上+7%(24億ドル)と予想を上回りましたが、米州(Americas)のコンプが軟化。会社は関税を理由に通期の営業利益率見通しを「前年比-100bp」から「-160bp」へ引き下げ、通期EPSも減額しました。CFOは「営業利益率引き下げはすべて関税の純影響による」と明言。翌6日、株価は約-20%。EPSが予想を上回っても、関税という外部コストが利益見通しを直接削ると成長株は急落する——「good earnings ≠ good stock」の典型で、マルチプル収縮を伴いました。

💡 学びEPSが予想を上回っても、関税による営業マージン見通しの引き下げが嫌気され急落。『good earnings ≠ good stock』。外部コスト(関税)が利益見通しを直接削り、成長株のマルチプル収縮を招いた。

出典: CNBC (2025-06-05) / SEC EDGAR (2025-06-05)

所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1

企業固有 (ミクロ)需要鈍化の確定 / 通期ガイダンス大幅減額

Q2 FY25決算 — 北米同店-4%+通期大幅下方修正で翌日-19%

9月4日引け後、第2四半期(FY2025)決算で米州(Americas)の同店売上が-4%と需要鈍化が確定。会社は関税(de minimis=少額免税の撤廃を含む)で通期の粗利を約2.4億ドル押し下げると織り込み、通期ガイダンスを売上$10.85-11.00B・EPS$12.77-12.97へ大幅下方修正しました(3月の当初$14.95-15.15から大きく後退)。翌5日、株価は**約-19%**で、年初来下落は約6割に達しました。内部(米国需要の鈍化・製品サイクルの停滞)が主役、外部(関税)が増幅役という本シナリオの構図が最も明確に出たクライマックスです。

💡 学び北米コンプ-4%は需要鈍化の『確定』。関税の粗利圧迫(約2.4億ドル)と合わせ通期見通しを大きく削り、成長前提が完全に崩れた。年初来約60%下落のクライマックス。内部(需要・製品サイクル)が主役、外部(関税)が増幅役という構図が最も明確に出たイベント。

出典: CNBC (2025-09-04) / The Motley Fool (2025-09-06) / Seeking Alpha (2025-09-04)

所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1

各出来事の出典は、上の解説それぞれの末尾に記載しています。

お疲れさまでした 🎉

別のシナリオでも「なぜ動いたか」を分解してみましょう。