このシナリオでは、2025年に53回も最高値を更新し史上初の$4,000/ozを突破した金(GLD)の値動きを、6つの出来事に分解します。マーカーの色は所属する軸(外部=アンバー / 内部=エメラルド / テクニカル・需給・心理=バイオレット)、ラベルが出来事の内容を表します。株式と違い、金は決算ではなく実質金利・ドル・信認・中央銀行やETFの需給で動く——同じ"上昇"でも燃料が違うことを意識して読んでください。
『Liberation Day』関税ショック — 安全資産の金も一時売られる
2025年4月2日、トランプ政権が予想を超える広範な相互関税("Liberation Day")を発表し、世界の市場が急落しました。ここで重要なのは、安全資産であるはずの金(GLD)も初動ではいったん売られたこと(4/2→4/7で約-5%)。極端なショックの初動では、損失の穴埋めや追証・デレバレッジで"何でも現金化"が起き、相関が1に近づきます。金の本来の逃避買いが効いたのは底打ちの後で、ここから$3,500への急騰が始まりました。「危機=金が即上昇」ではない、というのが最初の学びです。
出典: NPR (2025-04-03) / State Street
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
史上初の$3,500突破 — トランプのパウエル批判→ドル安・FRB独立性懸念
4月22日、トランプ大統領のパウエルFRB議長への批判・解任観測が強まり、ドルは3年ぶりの安値(DXYは98台、2022年3月以来)に。金スポットはアジア時間に史上初めて**$3,500/ozを付けました(年初来で約+31%)。金の最重要ドライバーは実質金利・ドル・"信認"**。FRBの独立性が脅かされると、ドルと米国債の信認が揺らぎ、無利息でも『どの国の負債でもない資産』である金に資金が向かいます。これがこの構造相場の核です(なお当日のGLDの米国市場の終値は、$3,500がアジア時間の瞬間高だったため小幅安で、安全資産の上昇は"瞬間の最高値"と"日次終値"でズレることがある点にも注意)。
出典: Bloomberg (2025-04-22) / Kitco News (2025-04-22)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
史上初の$4,000突破 — 米政府閉鎖が安全資産需要を加速
10月1日に始まった米政府閉鎖(最終的に史上最長の43日)は、経済指標の停止と財政不安を通じて安全資産需要をさらに加速。関税・FRB独立性懸念とも重なり、10月8日に金スポットは史上初の**$4,000/ozを突破しました。$3,500(4/22)から$4,000までわずか36日**という急ピッチです。外部マクロ(関税+FRB+政府閉鎖+財政赤字)が一方向に重なると、放物線的な上昇になる——"米国の信認"が一斉に問われた局面で、金は分散・逃避先として選ばれました。
出典: CNBC (2025-10-07) / World Gold Council (2025-10-08) / Wikipedia
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
2013年以来最大の1日下落 — 放物線相場の利益確定
$4,000突破の勢いはさらに続き、前日(10/20)にはスポットで$4,380の最高値を付けました。しかし9週連騰・買われすぎの反動に、米中貿易摩擦の一時緩和・ドル反発が重なり、10月21日に金スポットは2013年以来最大の1日下落(GLDで約-6%)。強いファンダ(外部・構造)が続いていても、放物線的な過熱は短期で必ず反動が出ます。連騰・36日で$500上昇・RSI買われすぎが揃った局面での新規買いは、大きなドローダウンに晒される——方向(強気)が正しくても、短期のタイミングは別物という典型です。
出典: Mining.com (2025-10-21) / Yahoo Finance (2025-10-21)
所属軸: テクニカル・需給・心理 ・ カテゴリ 5
2025年通年 — 53回の最高値更新、中銀863t・ETF残高は過去最高
2025年を通じて金は53回の最高値を更新し、GLDは年間で約**+61%とS&P500(約+18%)を圧倒しました。価格だけでなく"需給の実数"を見ると、中央銀行は通年863トンを購入し、世界の金ETF保有残は4,025トン・運用残高$559Bへ(前年3,224トンから増加、年間流入$89Bは過去最大)。金には企業のような決算がない代わりに、脱ドル分散を進める中銀という価格に左右されにくい構造的な買い手**と、ETFフローが土台を支えます。株でいう"売上"をどこで読むか——金ではここを見るのが正解です。
出典: World Gold Council (2026-02-04) / World Gold Council (2026-01-08)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 8
放物線の崩壊 — ウォーシュFRB議長指名でドル高・金急落
2026年に入っても金は放物線的に急騰しましたが、1月末にトランプ大統領がタカ派とされるケビン・ウォーシュを次期FRB議長に指名。『FRB独立性懸念→金高』で上げてきた相場が、今度は**『タカ派議長→ドル高・利上げ観測』という無効化条件の発動で逆回転しました。金は高値から2日で-10%超(GLDは1/30に約-10%、同日のスポットは1980年代以来最大級の急落)。金とドル(実質金利)はシーソーで、安全資産でも過熱の反動と政策観測の転換で激しく振れる——本シナリオにおける"読みが外れる/反転"の典型**です。上昇の燃料(米国とドルへの不信)が薄れれば、金は逆に動きます。
出典: CNBC (2026-01-29) / Fortune (2026-01-31)
所属軸: テクニカル・需給・心理 ・ カテゴリ 6