このシナリオでは、**GLD(SPDR Gold Shares)**が約1年3ヶ月で侵攻高値191ドルから安値151ドルまで急落し、そこからSVB危機で再反発してほぼ横ばいに戻るまでの軌跡を追います。値動きの主役は企業業績でも株式市場でもなく、Fedの金利政策→実質金利の変化→ドル指数の連動という外部マクロ要因です。チャート上のマーカーは色が所属する軸(外部=アンバー / 構造的=グレー / テクニカル=バイオレット)を表し、各マーカーは下の解説と対応しています。
ロシア制裁強化・戦争リスク高騰でGLD高値191.51ドル
2022年3月8日、米英がロシア産原油の輸入禁止を発表し地政学的緊張が極限に達した。GLDは191.51ドルと期間高値を記録し、翌9日には戦争プレミアムの剥落で−2.97%と急落した。恐怖のピーク=価格のピークという逆張りの構図を、これ以上なく鮮明に示す場面だった。安全資産の急騰は「価格が正しいから」ではなく「恐怖が極まったから」という感情的な側面を持つ。
出典: BullionVault (2022-02-28) / Finance Magnates
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7
Fed初回利上げ(+25bp)決定 — 2018年以来初
FOMCが2018年以来初の利上げ(25bp)を決定し、40年ぶりの引き締めサイクルが正式に始まった。個々の25bpより、「連続利上げが続く」という方向性のメッセージが金の上値を抑えた。実際には6〜11月の連続75bp利上げ(計3回)が金を本格的に押し下げたが、この初回決定で市場は将来の実質金利上昇を先読みし始めた。マクロ要因は単発でなくトレンドとして機能する。
出典: Federal Reserve Board (2022-03-16)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
CPI 8.6%サプライズ後の大幅利上げ期待で金急落
6月10日公表のCPI(前年比8.6%)が予想を上回り40年ぶり高水準となった。市場は75bpの大幅利上げを織り込み始め、DXYが急騰。金利上昇とドル高という二重の逆風でGLDは6月13日に−2.64%下落した。「高インフレなのに金が下がる」——これは反直感的だが、高CPIがFedの利上げ加速を招き、実質金利を押し上げるメカニズムで説明できる。インフレと実質金利は同じ方向に動かない。
出典: World Gold Council (2022-09-01) / CNBC (2022-11-10)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
Fed 3回連続75bp利上げ — 実質金利+1%台・DXY20年ぶり高値
9月のFOMCで3回連続75bpが決定されFF金利は3〜3.25%へ。ターミナルレートの引き上げ(SEP:2023年に4.6%と予想)とタカ的な声明でDXYが114.80台と20年ぶり高値を記録。実質金利(TIPS利回り)が+1%を超え、ドルが20年ぶり高値に達した9月26日が金の安値151.23ドルとなった。最悪の外部環境が揃った時が価格の底——金の逆説的な「底の法則」を確認できる。
出典: Federal Reserve Board (2022-09-21) / Investing.com
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
FOMC 75bp利上げも「利上げペース鈍化」示唆 — GLD+3.07%
11月2日のFOMCで4回連続75bpを決定したが、パウエルが「今後の会合で利上げペースを鈍化させることが適切になる時期が近い」と明言した。利上げは継続しているのに、速度が落ちるという期待だけで将来の実質金利低下が先読みされGLDは+3.07%急騰。市場は現在の政策より将来の政策の変化ベクトルに反応する。方向でなく加速度の変化が転換点を作る。
出典: CNBC (2022-11-02) / CNBC (2022-11-23)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
CPI 7.7%(予想7.9%下回り)でピボット期待加速 — GLD+3.04%
10月CPI(前年比7.7%)が市場予想7.9%を下回り、インフレのピークアウトが確認された。DXYが急落し実質金利も低下。GLDは+3.04%上昇した。6月の「CPI高騰→金急落」の完全な逆パターン——同じCPI発表でも、Fedへのインプリケーションが逆ならば金の反応も逆になる。数値そのものではなく「Fedはどう動くか」を問う習慣がマクロ予測の基本。
出典: Sunshine Profits / CNBC (2022-11-10)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
シリコンバレー銀行(SVB)破綻 — 金融システム不安で安全資産逃避
3月10日にSVBが経営破綻(米史上3番目の規模)。翌13日にシグネチャー銀行も閉鎖された。金融システム不安による安全資産逃避(金上昇)と、「FedはこれだけFedは利上げを続けられない」というピボット期待(実質金利低下観測)が二重に金に追い風となり、GLDは3月10日〜17日で計+7.6%上昇した。Fedの急速な利上げが銀行の債券評価損を生み、その銀行危機が利上げを止めるという皮肉な連鎖が金の反騰を加速させた。
出典: CNBC (2023-03-13) / CNBC (2023-03-10) / Federal Reserve OIG (2023-09-01)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 8