なぜ株価は動いたか
ETF中級EEMiShares MSCI Emerging Markets ETF2021-06-012022-10-28

EEM 2021–2022:ドル独歩高と利上げサイクルが新興国株を-37%に沈めた

FRBの急速な利上げサイクルがドル独歩高(DXY一時114)を招き、2021年6月から2022年10月の約17ヶ月でEEMは-37.1%下落。値動きの主役はドル高・米金利・インフレという外部マクロ要因で、ロシアのウクライナ侵攻・オミクロン株も複合的に新興国株を圧迫した。

STEP 1 ・ 前提知識

まず押さえる前提知識

予測の前に、この銘柄と『値動きの見方』の土台をつかみましょう。

EEM(iShares MSCI Emerging Markets ETF)とは

BlackRockが運用する新興国株ETF。ブラジル・インド・中国・台湾・韓国・サウジアラビアなど24ヶ国の大型・中型株約800銘柄に投資します。新興国株は、先進国に比べて外貨建て債務が多く、ドル高や米金利上昇の影響を受けやすいという特性があります。

なぜドル高が新興国株を下落させるのか

新興国の政府・企業は多くの場合、ドル建てで国際融資を受けています。ドルが高くなると①ドル建て債務の返済負担が自国通貨建てで増大、②資本が高金利のドル資産に流出(新興国から撤退)、③輸入コスト上昇→インフレ→各国中銀も利上げを迫られる、という悪循環が生じます。

2021年6月時点の状況

コロナ禍からの回復期で、FRBは金融緩和(ゼロ金利+量的緩和)を維持。EEMは2020年安値から大きく回復し、$49台で高値圏にありました。ただしインフレ上昇の兆候が出始めており、FRBの姿勢転換リスクが市場に意識され始めていた局面です。

予測の前に押さえておく仕組み

・FRBが政策金利を引き上げると→米国債利回り上昇→ドル高→新興国から資本流出→新興国株下落というチャネルが働きます。 ・EEMのような新興国ETFは、個別企業の決算よりも米ドル・米金利・地政学といった「外部要因」が価格を支配しやすい。 ・ドル指数(DXY)とEEMの相関は非常に強く、DXYが上がるとEEMは下がる傾向があります。

キーワード

DXY(ドル指数)
ユーロ・円・ポンド等6通貨に対するドルの強さを示す指数。2022年9月に約114.8の20年ぶり高値を付け、新興国通貨・資産を圧迫した。
FF金利(フェデラルファンズ金利)
FRBが設定する米国の政策金利。2022年3月〜11月に0〜0.25%から3.75〜4.00%へ急騰した。
新興国(エマージング・マーケット)
経済成長中だが先進国ほど成熟していない国々。中国・インド・ブラジル・韓国・台湾など。EEMはこれら24ヶ国の株式に投資する。
資本流出
投資家が新興国の資産を売却し、資金を米国など先進国に移すこと。ドル高・米金利上昇局面では加速しやすい。
外貨建て債務
ドルなど外国通貨で借り入れた負債。ドル高になると自国通貨建ての返済額が膨らむため、新興国の財政・企業にとって逆風。
テーパリング
FRBが資産購入(量的緩和)を段階的に縮小すること。2021年末から実施され、利上げへの布石となった。
FOMC
Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)。FRBの政策金利を決定する委員会で、年8回会合を開く。
インフレ(CPI)
消費者物価指数。2022年6月に前年比+9.1%のピークを付け、FRBの急速な利上げを正当化した。

当時の市場環境(マクロ)

個別の決算(内部要因)だけでなく、金利・インフレ・FRBの姿勢といった「外部要因」の土台を押さえると、値動きの背景がイメージしやすくなります。

政策金利(FFレート)
0〜0.25%(2021年6月)→ 3.75〜4.00%(2022年11月)
2022年3月の初回利上げから11月まで7回連続の利上げ。3回連続で75bpという異例の急騰。
米CPI(前年比)
約5%(2021年6月)→ 9.1%(2022年6月ピーク)→ 8.2%(2022年9月)
40年ぶりの高インフレがFRBの利上げ加速を促した。2022年9月の予想外の高止まりが特に市場ショックとなった。
DXY(ドル指数)
約92(2021年6月)→ 約114.8(2022年9月27日ピーク)
20年ぶりのドル高。FRBの急速な利上げと欧州エネルギー危機によるユーロ安が主因。
米10年国債利回り
約1.5%(2021年6月)→ 約4.2%(2022年10月)
リスクフリー資産の利回り上昇は、新興国からの資本引き上げを加速させた。
FRBの姿勢
緩和維持(2021)→ テーパリング開始(2021年末)→ 急速な利上げ(2022)
インフレ対応を最優先とした歴史的な引き締めサイクル。新興国には外部ショックとして波及。
地政学リスク
ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月24日)
エネルギー・食料価格を押し上げ、新興国のインフレを悪化させる追加ショックとなった。
このあとの「予測」では、ある時点までのチャートと状況だけを見て、その後の値動きを当てます。 「いまどんな材料が出たか → 株価はどう反応しそうか」を考えてみましょう。

STEP 2 ・ 予測

予測してみる

その時点までのチャートと状況から、イベント後に株価がどう動いたかを当てましょう。

ローソク足+出来高+移動平均(50/200)2021-11-25 まで表示中

現在の状況
南アフリカで感染力が強い新型変異株の報告があり、G7各国が南部アフリカからの入国を制限し始めています。

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新型変異株の出現が報告され、世界各国が入国制限を急遽検討。翌営業日(11/26)のEEMは?

💡 経験則(基準率)
経験則: 感染症の新変異株出現時は、リスク回避→新興国売り・ドル買いが起きやすい。ただし後に実害が軽微と判明すれば反発することも多い。
※ 確率の話であって保証ではありません。「方向」より「起きやすさ」で考えましょう。

STEP 3 ・ 解説

何が起きたか — 要因の分解

チャートのマーカーをタップすると、その出来事の解説に移動します。

3軸分解(このシナリオの寄与)

外部 (マクロ・環境)

主役。FRBが2022年3月から11月にかけてFF金利を0〜0.25%から3.75〜4.00%へ急騰させ、DXY(ドル指数)は2022年9月に20年ぶり高値の約114.8へ。ドル高は新興国の外貨建て債務を膨張させ、資本流出を誘発。インフレ・利上げ・ウクライナ侵攻・オミクロンという4つの外部衝撃が同時進行した。

内部 (企業・業界ファンダ)

脇役。EEMはブラジル・インド・中国・台湾・韓国など24ヶ国で構成される指数ETFで、個別企業の決算より外部マクロが主導。中国のゼロコロナ規制・規制強化が構成銘柄(アリババ等)を追加で圧迫したが、それも地政学・規制という外部要因に近い。

テクニカル・需給・心理

増幅役。2021年6月に高値圏にあったEEMは、ドル高・利上げ局面での典型的な下降トレンドを形成。2022年3月16日のFOMC翌日は-37%の下落局面でも一時+8%のリバウンドを見せ、過売りからの反発の典型例となった。DXYが9月末にピークアウトした後、10月4日に+3.3%の小反発が生じた。

⚖️ 当時の弱気の主張

当時の強気論にも根拠はあった——新興国はコロナ回復の恩恵でファンダメンタルズが改善しており、商品高はブラジル・サウジなど資源国の輸出収益を押し上げていた。中国の再開放期待、割安なバリュエーション(先進国比PER割安)もあった。しかしドル高・利上げという外部要因がこれらを圧倒する形となった。

🚫 無効化条件(何が起きたら逆か)

以下のいずれかが起きていれば読みは逆だった: ①FRBが利上げを停止またはペースを落とし、DXYが反落した場合、②ウクライナ停戦・制裁緩和により資源価格とリスク回避が後退した場合、③中国がゼロコロナを早期撤廃し内需回復が鮮明になった場合。EEMにとって最大の無効化条件はドル高の反転だった。

マーカー色 =外部内部テクニカル・需給・心理

このシナリオでは、約17ヶ月で**-37.1%**下落したEEM(iShares MSCI Emerging Markets ETF)を8つの外部イベントから読み解きます。チャート上のマーカーは色が所属する軸(外部=アンバー / 内部=エメラルド / テクニカル・需給・心理=バイオレット)、ラベルが出来事の内容を表します。EEMは株価の主役が「企業決算」ではなく「ドル高・米金利・地政学」という外部マクロ要因であることを示す好例です。

地政学・外部イベント感染症ショック・リスク回避

オミクロン株出現——新興国リスク回避で-3.35%

2021年11月26日、南アフリカで感染力の強い新型変異株「オミクロン」が確認された。世界各国が入国制限を急遽検討し、感染症への警戒からリスク回避の資金移動が発生。新興国株には先進国・ドル資産への「逃避先」と化す流れが典型的に現れ、EEMは-3.35%下落した。この下落はEEMの下降トレンドの始まりを告げる初動の一つだった。

💡 学び新興国ETFは感染症・地政学などの地球規模イベントに敏感に反応する。新興国は医療インフラが先進国より脆弱な場合が多く、コロナ関連ショックの下振れが大きくなりやすい。また、リスク回避時は新興国から先進国(ドル資産)への資金移動が起きやすい。

出典: S&P Global Market Intelligence (2021-11-26) / Business Standard (2021-12-01)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7

地政学・外部イベント地政学リスク・戦争・制裁

ロシア制裁強化・ウクライナ戦火拡大——EEM -3.74%

ロシアのウクライナ侵攻(2月24日開始)から約2週間後、対ロシア経済制裁の連鎖が続きMSCIはロシア株の指数除外を決定した。エネルギー・食料価格の急騰は新興国のインフレを悪化させ、特に輸入依存度の高い国々を打撃した。EEMは-3.74%下落。地政学ショックが外部チャネルを通じて新興国全体を圧迫するメカニズムを示す典型例だ。

💡 学びウクライナ・ロシアは共に新興国の食料・エネルギー供給に影響大。制裁によるロシア株の指数除外(2022年3月)は、EEMへの直接影響(ロシアの構成比縮小)だけでなく、新興国全体への信頼毀損として波及した。地政学イベントは即日・急激な反応を生む。

出典: Capital Economics (2022-03-07) / OECD (2022-05-01)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 7

マクロ経済FRB利上げ・金融政策

FOMC初回利上げ25bp——EEM +8.05%の大反発

FOMCが2018年以来初の利上げを決定(25bp)し、今後6回の追加利上げ見通しも公表した。市場では「最大の不確実性が解消された」との安心感が勝り、過売りの急激な巻き戻しが発生。EEMは1日で+8.05%という稀有な上昇を記録した。しかしこれは下降トレンドの転換ではなく、その後も下落が継続した。悪材料が現実になっても、不確実性の解消が一時的な反発を生むことを示している。

💡 学び悪材料でも『不確実性の解消』が相場を一時的に押し上げることがある。利上げ自体はEEMにとってネガティブだが、『不透明なまま悪化するリスク』が消えたことで過売りの反発が生じた。この反発を「底打ち」と誤認することは危険——実際にはその後も下落トレンドが継続した。

出典: Federal Reserve (2022-03-16) / CNBC (2022-03-16)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

マクロ経済FRB利上げ加速・引き締め強化

FOMC 50bp利上げ——22年ぶりの大幅利上げがEEM -3.69%

5月4日のFOMCで50bp(0.50%)の大幅利上げが決定され、今後の積極的な引き締め継続が示された。これはドットコム崩壊以来22年ぶりの大幅な一回の利上げで、ドル高→新興国通貨安→資本流出の連鎖を加速させた。EEMは-3.69%下落。利上げ幅が大きいほどドル高圧力は強まり、外部要因による新興国への打撃も比例して拡大した。

💡 学び利上げ幅が大きいほど新興国への圧力は増す。50bpの利上げはドル高→新興国通貨安→資本流出→資産価格下落の連鎖を加速させた。外部要因(マクロ)が新興国ETFの価格を直接動かす典型例。

出典: Federal Reserve (2022-05-04) / Fortune (2022-05-04)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

マクロ経済インフレ高止まり・大幅利上げ織り込み

CPI高止まり観測・75bp利上げ織り込みでEEM -3.5%

5月の米CPI(前年比8.6%)が予想を上回り、FRBが6月会合で75bpという1994年以来最大の利上げに踏み切るとの見方が急浮上した。インフレの高止まりがFRBの引き締め長期化を確信させ、DXYが急伸。EEMは-3.5%下落し、S&P500も-3.9%と市場全体が急落した。米国のCPI発表が新興国ETFにとって最大のイベントリスクであることを示す事例だ。

💡 学びインフレ指標の上振れは、FRBの利上げ加速→ドル高→新興国売り、という連鎖を即座に引き起こす。EEMにとって米国のCPI発表は、企業決算と同等以上に重要な外部イベントとなった。物価指標と金利・為替の連動を理解することが新興国ETF投資の基礎。

出典: CNBC (2022-09-13) / Federal Reserve (2022-06-15)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

マクロ経済インフレ再加速・追加利上げ観測

8月CPI予想外の高止まり——世界株売り、EEM -3.08%

8月の米CPI(前年比8.3%)が市場予想(8.1%)を上回り、インフレの粘着性が改めて確認された。FRBが9月FOMCで再び75bpの利上げを行うとの観測が強まり、DXY(ドル指数)が急上昇。EEMは-3.08%下落、S&P500も-4.3%の急落となった。インフレ→利上げ加速→ドル高→新興国売りという外部要因の連鎖が繰り返されるたびに、EEMの累積下落が積み上がった

💡 学びインフレが予想より高止まりするたびに、FRBの引き締め長期化→ドル高という経路で新興国株が下押しされた。同じ『インフレ高止まり』でも繰り返されるたびに下落幅は累積し、-37%という総下落に収束した。複数のインフレ・利上げショックが積み重なって大きなトレンドを作る。

出典: CNBC (2022-09-13)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

マクロ経済FRB75bp・ドル指数20年ぶり高値

3回連続75bp利上げ・DXY 20年ぶり高値——新興国に最大の逆風

FOMCが9月21日に3回連続の75bp利上げを決定(FF金利3〜3.25%)。翌9月27日、DXY(ドル指数)は約114.8と20年ぶり高値に到達した。強いドルは新興国のドル建て債務の返済負担を急増させ、資本流出と通貨安を引き起こした。このDXYのピーク期間がEEMの最大の逆風局面であり、DXYとEEMの逆相関というこのシナリオの核心的な構造が最も鮮明に現れた。

💡 学びDXYの急騰がEEM下落の構造的な要因。新興国はドル高・米金利高の複合ショックに無防備であり、自国の経済成長に関係なく外部要因で株価が下押しされる。DXYとEEMの逆相関を理解することが、このシナリオの核心的な学びだ。

出典: Federal Reserve (2022-09-21) / CNBC (2022-09-21)

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

マクロ経済ドル高ピークアウト・リスクオン転換

DXYがピークアウト・リスクオン反発——EEM +3.27%

DXYが9月末のピーク(約114.8)から反落し始め、ドル高ペースの一服が生じた。10月4日のEEMは**+3.27%**の反発。これはFRBの政策転換ではなく、ドル高の加速が止まったことへの需給反応だった。EEMの投資家にとって「利上げの終了」よりも「ドル上昇の一服」のほうが即効性が高いことを示す事例で、マクロ要因・為替がETFの日々の価格を動かすメカニズムを端的に表している。

💡 学びEEMの反発に必要なのは利上げの終了よりもドル高の一服。DXYが高値から反落し始めただけで新興国株が大きく買い戻される——EEM vs DXYの逆相関が最もよく現れた日。外部マクロ(為替)がETFの日々の価格を左右するメカニズムを象徴する。

出典: EC Markets / Brookings Institution

所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3

各出来事の出典は、上の解説それぞれの末尾に記載しています。

お疲れさまでした 🎉

別のシナリオでも「なぜ動いたか」を分解してみましょう。