このシナリオでは、四半期決算をほぼ一貫して予想超過しながら、約1年強で株価が約4割下落したADBEの値動きを、チャート上の7つの出来事に分解します。マーカーの色は所属する軸(外部=アンバー / 内部=エメラルド / テクニカル・需給・心理=バイオレット)、ラベルが出来事の内容を表します。読みどころは一点——「決算ビート=買い」という直感がなぜ繰り返し外れたのか。答えは業績ではなく、生成AIによる構造的破壊懸念で「成長持続への確信(マルチプル)」が縮み続けたこと(ディレーティング)にあります。
Q1 FY25は過去最高売上で予想超過 — それでも翌日-14%
3月12日引け後、第1四半期(FY2025)決算は売上**$5.71B(前年比+10%・過去最高)、非GAAP EPS $5.08で市場予想を上回り、通期目標も再確認しました。にもかかわらず翌13日、株価は約-14%**急落。市場が問題視したのは売上ミスではなく、生成AIの収益化(マネタイズ)への懐疑と成長鈍化懸念でした。AI関連ARRはまだ$125M規模で、「Adobeは本当にAIで稼げるのか」という疑念が晴れず、高いバリュエーションのバーに対して「good newsだが予想超過幅が足りない」と判断された——本シナリオの起点であり、最重要の学びです。
出典: SEC EDGAR (2025-03-12) / SiliconANGLE (2025-03-12)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1
関税『90日停止』で全面高 — 指数連動の急騰
4月9日、トランプ政権が相互関税の90日停止を発表し、S&P500は**+9.5%と2008年以来の歴史的急騰となりました。ADBEもこの全面高に連れて+7.25%。注目すべきは、この上昇がADBE固有の破壊懸念やファンダとは無関係**で、純粋に市場全体(外部マクロ)のリスクオンによるものだった点です。下落トレンドの個別株でも、マクロの大波が来れば一時的に物語は上書きされます。個別ストーリーに没入していると、この種の指数連動の動きを見落とします。
出典: CBS News (2025-04-09) / NPR (2025-04-09)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 3
Q2 FY25は beat & raise — それでも翌日-5%
6月12日引け後、第2四半期(FY2025)決算は売上**$5.87B(+11%・過去最高)、非GAAP EPS $5.06と再び予想を上回り、しかも通期の売上・EPS目標を引き上げました。教科書的には強い「beat & raise」です。ところが翌13日は約-5%下落(sell the news)。弱気の論拠が「この先の成長前提が生成AIで崩れる」という構造論**である限り、目先の好決算では懸念を反証できず、ディレーティングは止まりません。テーマと決算は時間軸が違うことを示すイベントです。
出典: SEC EDGAR (2025-06-12) / Investing.com (2025-06-12)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1
Figma上場(初日約3倍)→ Meliusが格下げ — 破壊テーマ点火
7月31日、AIネイティブなデザインツールFigmaがNYSEに上場し、初日に株価が約3倍・時価総額約680億ドルへ。これはAdobeが2022年に約200億ドルで買収を断念した相手で、その高評価上場は「AIネイティブ競合の脅威」を市場に鮮烈に可視化しました。直後の8月11日、Melius ResearchがADBEをSell(目標$310)へ格下げし、「SaaS各社はAIによるマルチプル縮小の初期段階にある」と警告。格下げは下落トレンドを追認する形で後追いに出やすく、株価を先導するより心理・需給を冷やす役割が大きいことも読み取れます(業界・競争=internalの業界要因)。
出典: CNBC (2025-07-31) / Investing.com (2025-08-11)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 2
1年で約4割安 — S&P500に大きく劣後(ディレーティング鮮明)
決算を重ねるほど株価は水準を切り下げ、年初来で約**-28%(本期間データ)、報道では直近12カ月で約-37.5%下落。一方この間S&P500は堅調(本期間で約+31%)で、相対的な劣後がより際立ちました。業績は良いのに株価は指数に大きく負ける——これがディレーティング(マルチプル縮小)の正体です。生成AIが既存SaaSの成長前提を崩すという構造的テーマ(external / structural)**が、四半期ごとの好決算を上回って株価を支配した1年でした。「良い会社≠良い株」を年単位で体現した局面です。
出典: Seeking Alpha (2025-11-25) / The Motley Fool (2025-12-14)
所属軸: 外部 (マクロ・環境) ・ カテゴリ 8
Q1 FY26はビートでもCEO退任発表が重なり-8%
3月12日引け後、第1四半期(FY2026)決算は売上**$6.40B(+12%)、非GAAP EPS $6.06(+19%)と力強くビートしました。しかし同時に、約18年Adobeを率いたCEO Shantanu Narayenの退任方針を発表。ARR成長の鈍化懸念も重なり、翌13日は約-8%**下落しました。好決算でも「将来の不確実性」が増すと売られる典型で、トップ交代(経営陣交代=内部要因)はビートを相殺しました。報道はこの交代を「AI転換の遅れへの投資家の苛立ち」の象徴とも位置づけており、構造懸念と地続きです。
出典: Adobe Newsroom (2026-03-12) / Investing.com (2026-03-12)
所属軸: 内部 (企業・業界ファンダ) ・ カテゴリ 1
$25B自社株買い+決算前の思惑買いで短期反発(+7%)
4月21日、Adobeは上限**$25B(〜2030年)の自社株買いを承認。時価総額の約4分の1に相当する規模で、「割安すぎる」という会社側のメッセージでもあります。破壊懸念が十分に織り込まれた安値圏で、この需給改善と6月11日のQ2決算を控えた思惑買いが重なり、5月29日は約+7%**の短期リバウンドとなりました。「下落テーマ」も永遠ではなく、織り込み済みになった瞬間が転機になりうること、そして仮に「AIがAdobeを破壊する」と正しく読んでいても、織り込み後のショートはこうした踏み上げに遭うこと(方向よりタイミングとサイズ)を示します。
出典: The Motley Fool (2026-05-05) / Investing.com
所属軸: テクニカル・需給・心理 ・ カテゴリ 4